新しい FIFA W 杯の審判:機械学習におけるヒューマン・イン・ザ・ループ

新しい FIFA W 杯の審判:機械学習におけるヒューマン・イン・ザ・ループ

ワールドカップでオフサイド判定を改善するために、ヒューマン・イン・ザ・ループの機械学習がどのように活用されているかをご紹介します。

by  Jacob Bengtson
この記事は、2022/12/7に公開された「The Newest FIFA World Cup Referee: Human-in-the-Loop Machine Learning」の翻訳です。

世界中を熱狂させるイベントであるサッカーの世界選手権、ワールドカップが2022年に開催されました。今回のワールドカップは、いくつかの点で注目を集めています。1つ目は開催時期です。開催地カタールでは、夏には気温が41.5℃を超えることを受けて、FIFA は伝統に反し、北半球の冬の時期に大会を開催することにしました。

2つ目は、アジア大陸で開催されるワールドカップは、2002年の日韓共催の大会以来2回目になり、さらに今大会は中東地域で開催される初めての大会となることです。

そして、3つ目が最も興味深い点です。それは、ゲームの質を向上させるために、ピッチ内外でテクノロジーとデータが革新的な方法で導入されている点です。ピッチ外のイノベーションとしては、最先端の冷却システムや、観客の暴動を防ぐために設計されたカメラとコンピュータ・ビジョン・アルゴリズムを導入しています。サッカーファンにとって、観戦体験を向上させる新しいテクノロジーはもう実在するものなのです。

今回、私が最も注目したデータイノベーションは、審判がより正確にオフサイドを判定するためにヒューマン・イン・ザ・ループ (HITL) 機械学習ソリューションを導入したことです。FIFAは、この機械学習ソリューションを半自動オフサイド判定テクノロジー (SAOT、Semi-Automated Offside Technology) と称しています。HITL 機械学習は斬新なテクノロジーではありませんが、サッカーの国際大会という大舞台で使用されたことは、プロスポーツにおける審判の質を向上させる仕組みとして、機械学習の大きな一歩となります。

ヒューマン・イン・ザ・ループの機械学習とは?

機械学習は、人口知能のサブカテゴリーとして、明示的にプログラムしなくてもコンピュータシステムがタスクを学習することができます。HITL 機械学習では、システムが実施する作業を人間 (できればその分野の専門家) が検証するステップが追加されます。

つまり、HITL 機械学習は、基本的に機械学習と人間の持つ能力の両方の強みを兼ね備えていると言えます。機械学習は、複数のシステムにまたがって拡張でき、人間の脳よりも指数関数的に速くデータを処理できるというユニークな利点があるため、人間よりも多くのタスクを処理できます。しかし、機械学習は常に完璧というわけではありません。そこで、システムのトレーニングや実行されるタスクに専門家 (人間) を含めることで、機械学習がタスクを誤って実行する可能性を最小限に抑えることができます。

人間の関与は、学習データを与えてシステムを学習させる場合と、SATO のようにタスクが正確に実行されたかどうかを検証する場合があります。 

世界最高水準の機械学習ソリューション

SAOT の一部として実装された 機械学習モデルは、プレーをオフサイドかそうでないかを分類するような学習がされています。主に2つのデータソースを使用します。1つ目は、アディダスの新しい IoT 対応ボールアル・リフラ プロです。ボールの中に、慣性を感知するセンサーを内蔵し、そのデータを1秒間に500回という驚異的なスピードでキャプチャーし、発信できる画期的なボールです。ボールのデータから、蹴った瞬間に蹴った方向を500分の1秒以内に測定することができます。

2つ目のテクノロジーとして、スタジアムの屋根の下に設置された12台のカメラの情報を機械学習モデルに入力します。このカメラは、フィールド上の22人の選手それぞれについて、1秒間に50回の割合で29点のデータポイントをキャプチャーします。

つまり、フィールド上の選手から17,400点の位置情報が、毎秒 SAOT のモデルへ入力されるのです。

SAOT 機械学習モデルは、2つのデータソースであるボールの慣性データとカメラによる選手の位置データから、各プレーがオフサイドか否かの分類結果を提供することができるのです。ここでソリューションの HITL 的な側面が関わってきます。オフサイドの予測は、直接フィールドにいるレフェリーではなく、ビデオマッチオフィシャル (VMO) に送られ、VMO がオフサイドの予測を検証します。このモデルでは、オフサイドのプレーにつながったパスが蹴られた場所とオフサイドラインの情報がオフェンス・ディフェンスの選手の29個の情報と共に提供されます。そして、VMO が、確かにオフサイドであったことに同意した場合、フィールドレフェリーに知らされるのです。

HITL 機械学習の応用

今後の展開として、このテクノロジーを他のスポーツに応用するのは、自然な流れではないでしょうか。もし、NFL の審判が自動化されたシステムを使うことで、選手がラインを踏んだかどうか、あるいは1ヤードラインからの QB スニークでボールがゴールラインを越えたかどうかを検知できたらどうでしょうか。NBA では、HITL 機械学習がブロッキングかチャージングかを分類するために使われるかもしれません。

HITL 機械学習の凄さはそのスピードにあります。選手の足がラインを超えているかどうかについて、同じカメラアングルを元に5分も検証するなどということは無くなることでしょう。その代わりに、予測が即座にできるのです。ただし、このテクノロジーは人間に取って代わるわけではありません。最終的には、経験を積んだ人間がその予測が正しいかの判断をする必要があります。(SF映画のようにロボットが世界を支配するという心配はありません!) 

ビジネスに置き換えると、HITL 手法を用いることで、予知保全アプリケーションで故障の正確さに起因するダウンタイムを最小化することが可能であり、関係者に機械学習モデルからの出力に対する信頼性を与えることができます。

これらの問題を解決するには、機械学習以上のものが必要です

半自動化されたオフサイドの判定テクノロジーソリューションが、クラウドに置かれた単なる機械学習モデルではなかったことに注目してみてください。データをストリームし、変換し、読み込み、分析し、レポートする、そのすべてを数秒のうちに行う必要があるのです。また、これらのデータサービスは、オンプレミス (ボールとカメラ) とクラウド (モデルのトレーニング、予測、レポート用ウェブアプリケーション) の両方でシームレスに連動していなければなりません。

機械学習ソリューションを構築したことのある人なら誰でも、ビジネスに適したソリューションを提供するには、クラウド上の機械学習ポイントソリューションだけでは不十分であることを経験しているはずです。だからこそ、Cloudera は、エンドツーエンドのデータライフサイクルの各段階で統合データサービスを備えたハイブリッドデータプラットフォームであるCloudera Data Platformを構築したのです。

Cloudera Data Platform のハイブリッドソリューションについての詳細は、こちらでご確認いただけます。

 

 

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