金融包摂の鍵を握るデータとAI

by Joe Rodriguez
この記事は、2023/11/14に公開された「Data and AI as the Key to Unlocking Financial Inclusion」の翻訳です

当たり前に受けられるサービスを考えたとき、銀行や金融サービスの利用はすぐに頭に浮かぶものではないかもしれません。例えば思考実験として、ローンを組む能力なしに家や車を買おうとすることを想像してみてください。現金払いで対応するのか、短期ローン、小切手現金化サービス、プリペイドデビットカードなどの銀行以外のソリューションに頼った場合どうなるでしょうか。

問題だと感じたことがないと考える人もいるかもしれません。しかし、以前のブログ記事で述べたように、正式な金融サービスを利用できない世界の17億人の成人にとって、これは非常に現実的な問題であり、経済発展と貧困削減を推進する上で大きな課題となっています。

金融サービスへのアクセスと教育 (金融教育を含む) の欠如は、世界の貧困の主な要因に含まれます。貧困は、貧しい人々だけでなく、社会的にも経済的にも私たち全員に影響を及ぼす課題です。アメリカ進歩センター (CAP、Center for American Progress) によれば、「子どもの貧困に関連する米国のコストは年間約5,000億ドル、GDPのほぼ4%に相当する」とのことです。

CAP は幼少期の貧困がもたらす影響 (年間) について次のように述べています。

  • 生産性と経済生産高が GDP の約1.3%減少する
  • 犯罪コストを GDP の1.3%引き上げる
  • 医療支出を増加させ、健康の価値を GDP の1.2%減少させる (出典:CAP)

十分なサービスを受けていない、低所得の個人やコミュニティに対して、手頃な価格で利用しやすい金融サービスを提供し、経済的な豊かさを向上させるのに必要なリソースを提供することは、金融機関が積極的に解決すべき問題です。そしてこの問題は、データの活用と成功への意志があれば解決できます。

データは、金融包摂を達成する上で極めて重要な役割を果たします。このブログ記事では、金融包摂がなぜビジネス上、理にかなっているのか、そして金融サービスへのアクセスを変革するためにデータとAIがいかに不可欠かを検証します。

金融包摂のビジネス上の理由

あらゆる社会的、経済的階層の人々を向上させたいという「思いやり」だけではなく、金融機関は、ビジネスとしても金融包摂を追求すべき理由があります。

第一に、金融包摂を促進することで、税制優遇や有利な規制など、規制や政府による優遇措置や助成金を得ることができます。金融包摂イニシアチブにおいて政府や国際機関と協力することは、評判を高め、成長と革新のための新たな機会を創出することにつながります。例えば、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、持続可能性のための17の目標を掲げていますが、このうち金融包摂は、「17のうち8つの目標で、その実現手段として重要な位置を占めています。」

第二に、これまで未開拓だった市場に参入することで、金融機関は顧客基盤を拡大し、収益と利益率の向上につなげることができます。

そして、人は金融の取り組みに関して支援してくれた、と感じるとその金融機関に対する忠誠心が高まる傾向があります。それは、顧客ロイヤルティと信頼につながります。

データとAIを恵まれない人々のために活用する

データと、それをより包括的かつ効率的に分析する新たなテクノロジーを活用することで、金融機関は十分なサービスを受けていない人々へのリーチを拡大し、金融包摂を向上させ、経済的機会へのアクセスと金融的安定を得ることにつながります。

ここでは、データと AI が、十分なサービスを受けていない人々にどう役立てるのかをいくつかご紹介いたします。

ターゲットを絞ったアウトリーチのための予測分析: 個人や地域社会がどのようにビジネスを行い、金融サービスと関わっているかを理解することは、十分なサービスを受けていない人々への最善策を考えるための鍵となります。データと AI は、人口統計学的、地理的、行動学的データを分析することで、金融機関が現在十分なサービスを受けていない潜在的なコミュニティを特定するのに役立ちます。マイクロブランチや適切な金融サービス、教育リソースを提供することで、十分なサービスを受けていない人々への支援活動を行うことができるのです。

事例紹介:JPモルガン・チェースがどのように「ビジネス、データ、政策、慈善活動のリソースを結集し、米国ワシントンDC地域の黒人、ラテン系、ヒスパニック系世帯に対して住宅の手頃な価格と安定性を確保し、住宅所有の機会を改善する方法」については、リンク先 (英語) で紹介されています。

信用スコアリングとリスク評価:従来のクレジットスコアリング型のモデルは、狭く限られた財務データに依存しているため、クレジットヒストリーが確立していない個人がローンやその他の金融商品を利用することは困難です。AIアルゴリズムは、携帯電話の使用状況、公共料金の支払い、ソーシャルメディアの活動といった、従来とは異なるデータを含む、より広範なデータソースを分析し、クレジットヒストリーを超えた信用力を評価することができます。これにより、金融機関は、これまでリスクが高いと考えられていた人々も含む、より幅広いターゲットに対して信用供与を行うことができるのです。

事例紹介:Bank Rakyat IndonesiaがClouderaを活用し、同行のクレジットスコアリングシステムを強化するために、俊敏で信頼性の高い予測拡張インテリジェントソリューションを構築した方法をご紹介しています。リンク先 (英語) をご確認ください。

申請手続きの簡素化: AIは、複雑な金融用語を説明しながら、申請プロセスをガイドし、理解しやすいステップに分解することができます。これを活かし、十分なサービスを受けていないコミュニティが金融サービスの申請を行う上で活用できます。AIを活用したツールやアプリは、金融リテラシーを向上させる教育コンテンツを提供し、ユーザーが金融上の意思決定の意味をよりよく理解できるよう支援できます。また、外国語話者に対して、リアルタイムの翻訳サービスを提供することも可能です。AIは、身分証明書、所得証明書、その他の書類をスキャン、認識、検証することで、必要書類の確認と処理を行うこともできます。また、AIアルゴリズムによって財務状況を分析し、どの金融商品やサービスがニーズに合うか、個別にアドバイスすることもできます。

Cloudera Data Platform (CDP) は、金融機関が、十分なサービスを受けていないコミュニティにおける金融包摂に取り組むための支援に貢献してきました。CDP は、銀行が構造化データと非構造化データの両方を含む大量のデータを単一の統合プラットフォームで保存、処理、分析することを可能にする、完全なデータライフサイクルのハイブリッド・

データ・プラットフォームです。CDP を利用することで、銀行は必要なデータに迅速かつ容易にアクセスし、十分なサービスを受けていないコミュニティの金融ニーズや行動をよりよく理解し、独自のニーズに合った金融商品やサービスを設計することができます。

Cloudera が金融サービス業界をどのように支えているのか、詳細はこちらをご覧ください。

 

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