ビッグデータと関係の深い技術のひとつに「機械学習」があります。実際、ビッグデータと機械学習は相互に関連し合ってAI(人工知能)の急速な発展に貢献してきました。本記事ではビッグデータが機械学習やAIとどのように関わっているかと、それらの技術を運用する職種について解説していきます。
ビッグデータと機械学習
ビッグデータのような膨大なデータを人の手で分析するのは事実上不可能です。それゆえ、ビッグデータと機械学習には深いつながりがあります。
そもそも機械学習とは
機械学習というのはデータの分析手法のひとつです。もう少し詳しく説明すると、機械学習ではコンピュータに「データ」と「分析の指標となる指示(特徴量)」を与えて、コンピュータにデータの背景にあるルールやパターンを発見・学習させます。
機械学習の質を左右するのは特徴量です。一例を挙げると、機械学習による売上予測では過去の売上データの「どの部分」に注目するかで予測の精度が変わります。指標を「曜日」とした場合と「天気」とした場合では、それぞれ予測結果は異なるでしょう。ほかにも時間帯、天気、気温、広告費、セール実施の有無など、特徴量となりうるポイントにはさまざまなものがあります。いずれにせよ、機械学習では基本的に人間が特徴量を選んでコンピュータに指示しなければなりません。
一方、人間が特徴量を指示する代わりにコンピュータ自らが指標となる特徴を見つけ、分析と学習を行うのがディープラーニングです。ディープラーニングは機械学習の一種ですが、精度を高めるには大量のデータを必要とするため、ビッグデータとの相性が特に良い技術といえます。
AIとの関連
機械学習とディープラーニングはどちらもAIの軸となる技術です。そしてAIは、ビッグデータとも深い関係があります。AIの発展には機械学習やディープラーニングを繰り返し行う必要がありますが、その際に大量のデータ(ビッグデータ)が必要となるからです。
一方、ビッグデータを効果的に活用するには膨大なデータを効率よく分析整理し、有用なデータを抽出する必要があります。そして、それを可能にするのがAI技術です。つまり「ビッグデータによってAIが発達し、AIによってビッグデータの活用が進む」というわけです。
ビッグデータや機械学習に関わる職種
ビッグデータや機械学習をビジネスに生かすには、専門ノウハウを持ったプロフェッショナルの存在が欠かせません。
機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、ビッグデータやディープラーニングの技術を駆使して機械学習のシステムを開発するプロフェッショナルです。ビッグデータをどれほど効率よく分析できるか、またどれほど精度の高い結果を得られるかは、機械学習エンジニアの手腕にかかっています。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、ビッグデータを分析するプロフェッショナルです。機械学習エンジニアなどが作成したシステムを利用してビッグデータを分析し、結果をレポートにまとめたり、新たな経営戦略を提案したりします。
なおデータサイエンティストには、統計学やプログラミングに関する高度な知識が欠かせません。日本ではまだ人材が不足気味のため、ビッグデータの活用やAI開発を進めていくために、データサイエンティストの育成が重要な課題となっています。
データアナリスト
データアナリストはビッグデータの分析結果を元に、課題解決とビジネス上の提案を行うプロフェッショナルです。データサイエンティストと混同されがちですが、実際に両者の業務範囲はある程度重なり合っています。
ちなみにデータアナリストには「コンサル型」と「エンジニア型」の2タイプがあり、前者は主にマーケティング会社やコンサルティング会社に所属する戦略提案のプロ、後者はビッグデータの分析に基づいて自社の商品やサービスの開発・改善を提案する専門職です。
将来性が高いビッグデータ市場
日本では2016年末から2017年にかけて官民データ活用推進基本法や改正個人情報保護法が制定もしくは施行されました。これを受けて、総務省は「平成29年度版 情報通信白書」の中で
”もとよりデータ利活用のニーズは高かったが、こうした環境整備によって予見可能性が高まり、今後一気にデータ利活用が進み、本年は「ビッグデータ利活用元年」となる可能性がある。”
と指摘しています。実際、ここ数年でビッグデータ市場は右肩上がりで成長を続けているため、ビッグデータを扱う業種は企業でも重要なポジションを任される可能性がある「将来性の高い仕事」といえるでしょう。
まとめ:ビッグデータと機械学習のニーズは今後も高まる
ビッグデータやAI、機械学習、ディープラーニングは一過性のブームではありません。これらの技術は相互に関連し合いながら進化し続けており、ビジネス分野で新しい価値を生み出しています。将来性の高い仕事に就くことを目指しているなら、ぜひビッグデータ関連の業種に注目してみてください。