最高データ・分析責任者にとって鍵となる「ストーリーテリング」

最高データ・分析責任者にとって鍵となる「ストーリーテリング」

あるデータの国での昔話

by Sandra Horn
この記事は、2022/11/16 に公開された「Once Upon a Time in the Land of Data」の翻訳です。

先日、ボストンで開催された Corinium 社主催の CDAO イベントに参加する機会に恵まれました。参加者が、金融サービス、保険、小売、消費財、ヘルスケア業界など多岐に渡るイベントです。全体を通して印象的だったのは、データサイエンスは新しい分野ではないものの、ほとんどの企業がデータオフィスとデータオフィサーの使命をまだ定義していないことでした。企業がデータを活用し、その潜在的な洞察を取り入れようとしていることは明らかですが、多くの企業は、ほとんど未知の領域で前進しています。成功を手にすることはできます。しかし、そこに至るまでには創造性と不屈の精神が必要となるのです。

ストーリーテリング 

データおよび分析チームがビジネスにもたらす価値を伝えるために、物語を使って伝えることで印象付ける「ストーリーテリング」を活用することが、繰り返し強調された共通のテーマでした。多くの人の意見で一致しているのは、データチームは、「データエンジニアリングの改善」や「マスターデータ管理の改善」といった技術的、戦術的な説明ではなく、ビジネス価値という言葉でその目標や成果を表現すべきだという点です。

ビジネス価値を明確にするためには、事業部門と協力のもと、答えを出すべきビジネス上の質問を特定することから始めます。そこから、ビジネスが何を必要としているのか、また、その答えを特定するのに役立つ適切なデータの入手方法についての指針を得ることができます。金融・保険業界のセッションでは、以下のような事例が紹介されました。

ビジネス目標 測定基準 データ戦術
公正な融資 人種間の引受の公平性を1%以内に抑える データエンジニアリングとモデリングの整合性を確保し、バイアスを排除する
検収照合業務の改善 自動照合プロセスの中断による手動調査の回避 データガバナンスの強化によるデータの不整合性の低減
臨床現場における対応の改善 医師が患者のそばにいる間に、関連する薬の相互作用や関連する病気の情報にアクセスできるようにする リアルタイムで、関連する薬や患者の記録を統合する

 

 

ビジネスへの影響に関連して、データオフィスがもたらす価値をどのように評価するのかという議論も行われました。そこで、以下のような測定基準の可能性について、いくつかのアプローチがありました。

  • エンドユーザーにとっての価値:シンプルさ、より多くの価値、実際に活用できるまでのスピード
  • 収益:収益の増加、顧客による採用の拡大、製品パイプラインの増加
  • コスト削減:回避できるコスト、手作業と時間の節約

測定基準をめぐる重要なポイントは、ビジネスパートナーと、目標とする測定基準に合意することに重点を置いたことです。ビジネスにおける測定可能な利益を明確にするために、ビジネスパートナーに協力してもらうのです。このポイントに続いて、測定可能な結果を使用して、将来のプロジェクトの予算を正当化することの大切さも強調されました(斬新なアイデアではありませんが、基本を再確認するものです。)

攻めなのか、守りなのか

これは、最高データ・分析責任者(CDAO)の役割のさらなる課題につながります。その使命は、「攻め」、つまり収益を上げることでしょうか。それとも、組織のリスクを管理する「守り」の立場なのでしょうか。サミットの講演者によると、主に、守りを求められているようです。役割の大部分は、規制遵守に関連するデータ管理です。プライバシー、データのセキュリティ、アクセス、データの使用に関するルール、相関するリスクの管理などが主な内容です。管理すべきデータ量の急激な増大と、それをより効果的に活用することへの期待が、取り組みを後押ししています。保険会社や金融サービスプロバイダーは、長年に渡り蓄積された組織内の多くのサイロ化したシステムによって、この守りの立場の役割はこれからも続くと言います。しかし、CDAO の目的がデータの安全な保存だけに留まれば、市場から取り残されることは目に見えています。

その結果、攻めの立場として、収益を上げるための目標が優先事項に浮かんできます。この攻めと守りを両立させる方法として、イベントではさまざまな戦術が共有されました。ある企業では、データチームを拡張し、分析機能も含めることで、データにさらなる目的を持たせています。顧客のニーズをより具体的に理解するために、顧客のタイプを中心としたデータおよび分析チームを立ち上げたのです。また、ある企業では、データオフィスの責任者が、デジタルチャネルも担当しています。このような責任の直接的な相関関係により、データから得られる洞察は、特に結果に沿ったビジネス成果を得ることができるのです。デジタルチャネル担当チームが継続的にデータからのメリットを受け、改善のためのフィードバックループが組み込まれているため、これは非常に説得力があるやり方です。

守りから攻めに転じた規制当局の報告書の例も、革新的でした。それは、ソースで修正されていないデータを使ったコンプライアンスレポートは、バラバラなチームがレポートを作成しても同じ問題を引き起こすというものでした。そのデータを個々のチーム内で修正すると、同じ不整合の手作業の修正を一元に行うのに対し、20倍のコストがかかるそうです。一元的に修正することで、コストの削減が図れ、利益率の改善につながります。   

「CDAO の使命は、攻め、つまり収益を上げることでしょうか。それとも、組織のリスクを管理する守る立場なのでしょうか。」

チェンジエージェント

最後に、CDAO は、変革の仕掛け人であるチェンジエージェントでなければならない、という言葉も何度も出てきました。データや AI をより広範囲に活用することには真のメリットがありますが、業界がずっと続けてきたやり方に対して、この価値を浸透させるのは簡単ではありません。例として、特殊保険のアンダーライティングが取り上げられました。アンダーライト担当のシニアレベルの社員が使っていたロジックを複製することで、最初の引受審査を効率化し、その後、独自のマニュアル査定を回すようにしました。これはプロセスを加速するために効果的であり、さらに再現可能であるということが証明されるまで、当初は多くの抵抗がありました。

CDAO の多くは、このチェンジマネジメントとしての役割について、肯定的に語っています。自分の会社での役割を自由に定義できることを実感しています。変化をもたらすことは非常に難しいことですが、データドリブン型文化の受容を前進させ、収益に影響を与えることを熱望していると語っていました。Cloudera は Corinium と共同で、CDAO の成功要因について EBook を執筆しました。この本には、チェンジマネジメントというトピックに関するデータエグゼクティブからのさらなる洞察が含まれています。技術的な細部にとらわれず、ビジネス目標を達成し、データオフィスで起きていることをわかりやすく説明する方法を模索することです。イベントの講演者の皆様には、ご自身の経験を共有していただき感謝しています。

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