IT技術の進歩に合わせて、私たちの身の回りにはさまざまな「デジタルデータ」が蓄積しています。多くの企業はこれらのデータを有効活用することで業務の効率化や売上の向上を達成してきましたが、こうした取り組みはまだまだ道半ばです。本記事では特に日本企業におけるデータ活用の課題と、課題の解決に向けた取り組みを紹介していきます。
データ活用とは?
データ活用とは、日々発生するデジタルデータをビジネスなどに役立てることをいいます。とはいえ、ひとくちにデータ活用と言っても、活用されるデータの種類や活用の方法は様々です。
データの種類
総務省の「 令和2年版 情報通信白書」によると、企業が活用するデジタルデータには「顧客データ」や「経理データ」といったものから、「POSデータ」、「eコマースの販売記録」、「GPSデータ」、さらにはIoT機器から自動的取得される「センサーデータ」まで多くの種類があります。
こうしたデータの多くは、利用する企業自らが収集するパーソナルデータですが、中には人口統計データのように国や自治体が「二次利用が可能な利用ルールで公開 」するデータもあり、これらは「オープンデータ」と呼ばれています。
データの活用方法
データ活用の方法もいろいろです。最も単純な活用方法は「閲覧」ですが、中にはPOSデータのようにただ閲覧するだけでは十分に活用できないものや、センサーデータのように(人間にとって)意味不明なものも少なくありません。
このためデータを有効活用するには、データの種類に応じて集計・分析したり、AIを活用した予測なども行う必要があります。
日本企業が抱えるデータ活用の課題
とはいっても、企業によるデータ活用には課題も少なくありません。国内に目を向けると大企業と中小企業とでデータ活用の程度に大きな差がありますし、海外との比較では日本企業全体がデータ活用で大きく遅れをとっています。
中小企業のデジタル人材不足
情報通信白書によると、日本国内で「統計的な分析」を行っている企業の割合は大企業で60.1%、中小企業では30.1%です。また「AIを活用した予測」を行っている企業は大企業で18.0%、中小企業ではわずか3.9%に過ぎません。
このような格差の理由として挙げられているのがデジタル人材の不足です。
たとえば大企業の場合、データ分析を担当する人が「データ分析専門部署の担当者」や「各事業部門のデータ分析専門の担当者」である割合はそれぞれ5割以上(51.7%、54.9%)ですが、中小企業では3割弱(29.3%、26.2%)にとどまっています。
これに対し「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」がデータ分析を行う割合は、大企業が44.7%なのに対して、中小企業では50.6%です。
オープンデータの活用が遅れる日本
国際的に見ると、データ活用の遅れは日本企業全体の課題です。たとえばデータ収集をサービスの開発や提供に活用、もしくは活用を予定している企業は、アメリカやドイツではいずれも7割を超えていますが、日本は25%に過ぎません。
一方、オープンデータを活用している企業はアメリカが55%、ドイツが53%なのに対し、日本は23%にどまりです。アンケートによると、「データの収集・管理にかかるコスト」や「デジタル人材の不足」「データ活用に関するノウハウ不足が主な理由と考えられます。
データ活用の課題解消に向けた官民の動き
現在、データ活用の課題解消に向けた取り組みは官民それぞれで進められています。
「Society 5.0」に向けた取り組み
まず「官」の取り組みとして挙げられるのが「Society 5.0※」です。国はSociety 5.0時代にふさわしいデジタル化の条件の1つとして「データの資源化と最大活用につながる、デジタル化」を挙げ、各種ルールやガイドライン、データ連係プラットフォームの整備などを推進しています。
また国や自治体が保有する官民データのうち「公益の増進に資するもの」をオープンデータ化して、企業(国民)が容易に利用できるようにする取り組みを進めています。
「地方豪族企業」による取り組み
民間企業の間では、特に「地方豪族企業」と呼ばれる、特定地域内のデータを一元的に収集・蓄積する企業によるデータ共有の取り組みが注目を集めています。
たとえば交通系事業を中心に広告や物品販売、不動産、レジャー施設運営などを行う鉄道系の地方豪族企業の場合、グループ内のデータ共有やオープンデータを取り入れることで「交通事業の高度化」や「中心市街地の活性化」「観光産業の活性化」などに取り組むケースが考えられます。
まとめ:経営改善から社会課題の解決にまで役立つデータ活用
企業は自社が収集・蓄積したパーソナルデータや、国や自治体が提供するオープンデータを活用してさまざまな経営課題の解決に役立てることができます。同時に、そのような取り組みは企業自身だけでなく、地域の活性化など社会課題の解決にも役立つ可能性があります。自社と地域の未来のため、国の動きとも連携しながら積極的なデータ活用を目指していきましょう。