金融規制とその先へ

by Monique Hesseling
この記事は、2024/2/15に公開された「Back to the Financial Regulatory Future」の翻訳です。

2007から2008 年にかけて起こった世界金融危機からすでに15年も経過しました。バックミラー越しに見える過ぎ去っていく景色のように、過去に囚われずに前進していきたいものです。しかし、2023年3月にシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻しました。これは2008年以降に破綻した米国銀行として最大規模であり、こうしてまた過去に引き戻されることになります。

SVB が破綻した理由は明確に説明できますが、この記事の目的は過去を蒸し返すことではなく、金融 (と保険) 機関が直面する規制とコンプライアンスの課題と、リスクを軽減し管理する上でデータがどのような役割を果たしているかを紹介することにあります。世界的な金融危機の再来は避けられないかもしれませんが、堅牢なデータ機能により、金融機関は規制への適応、コンプライアンス戦略の実施、リスク予測をより的確に行うことができるようになります。この未来を実現することは、投資する価値があると言えるでしょう。バック・トゥ・ザ・フューチャー PART III』のドクの「マーティ、未来はまだ決まっていないんだ。変えることはできる。自分の未来は、誰でも自分の望むように切り開くことができる」というセリフを連想させます。

チャンスは大きいが、課題も大きい

前述のような未来を実現するために、銀行や保険会社は、規制上の課題に対応するためにコンプライアンス戦略や業務の枠組みを常に見直すことが求められています。厳しいデータ保護措置から複雑なリスク管理プロトコルまで、金融機関は規制の変化に適応するだけでなく、新たな要件を積極的に予測し、さらにマイナスな結果も予測していかなければなりません。

そこに到達するためには、各機関は以下のような課題を乗り越える必要があります。

  • 技術革新:人工知能、クラウドコンピューティング、データ処理などの新しいテクノロジーは、コンプライアンス部門や業界の規制当局にとって、特にデータ、インフラ、セキュリティに関連するリスクやコンプライアンス要件に困難をもたらす可能性があります。
  • 規制遵守:銀行や保険会社が遵守しなければならない規制の数が増えているため、コンプライアンスは重要な課題となっています。金融安定理事会 (FSB)、証券監督者国際機構 (IOSCO)、国際保険監督者協会 (IAIS)、バーゼル銀行監督委員会 (BCBS) といったグローバルな機関はすべて、各国の規制当局の業務および金融機関内のコンプライアンスに影響を与えます。その上、それぞれの国には独自の規制リストもあります。
  • サイバーセキュリティとデータプライバシー:データ漏えいのニュースが頻発し、プライバシーへの懸念が高まるにつれ、規制やコンプライアンスの基準はより厳しくなっています。金融機関は、EU一般データ保護規則 (GDPR)、2018年英国データ保護法、カリフォルニア州消費者プライバシー法 (CCPA) など、複雑なプライバシー法に対処しなければなりません。また、デジタル オペレーショナル レジリエンス法 (DORA) の対象でもあります。これは、銀行、保険会社、投資会社などの金融機関の IT セキュリティを強化し、欧州の金融セクターがサイバー脅威や業務妨害に対して強靭であることを保証するのを目的とした欧州連合の規制です。
  • フィンテックと規制の裁定:フィンテック企業の台頭は、金融規制当局がどのように監視を行うべきかという新たな課題をもたらしています。これは、銀行を含む企業が、抜け穴を使ったり、管轄区域間の規制基準の違いを利用した動きを行わないように規制していく可能性があります。
  • リスク管理とガバナンス規制:規制当局は、リスクガバナンス、リスクの持続可能性、脅威要因の検知、緩和、追跡、是正にますます重点を置くようになっています。金融機関は、消費者の保護を維持するだけでなく、強固なリスク説明責任とガバナンスを実証しなければなりません。
  • 文化の変化と技術導入:伝統的な銀行や保険会社は、フィンテック企業の出現とビジネスモデルの変化に適応しなければなりません。そのためには、テクノロジーファーストの姿勢への転換と、業界の課題に対処するためのデジタルソリューションの導入が必要となります。
  • 規模が大きすぎて管理できない:金融機関の成長と複雑さが、効果的な監督と複雑な業務を管理する能力を妨げる場合、「規模が大きすぎて管理できない (TBTM, too big to manage)」状態となります。そして、TBTM だとみなされた金融機関は、必然的に一定の弱点を持ち、違反を繰り返しているとみなされるため、規制当局の監視が厳しくなる可能性があります。
  • AI規制:最も注目すべきは、欧州連合 (EU) のAI法で、これはAI技術の安全、責任、公正、透明な利用に焦点を当てたものです。EUの当初の目標は次のとおりです。「連合市場に投入され使用されるAIシステムが安全であり、基本的権利と連合の価値に関する現行法を尊重することを確保すること、AIへの投資と技術革新を促進するための法的確実性を確保すること、AIシステムに適用される基本的権利と安全要件に関する現行法のガバナンスと効果的な執行を強化すること、合法的で安全かつ信頼できるAIアプリケーションの単一市場の発展を促進し、市場の分断を防止すること」

最新のデータアーキテクチャに見る未来

これらの課題をうまく乗り切る鍵は、最新のデータアーキテクチャの採用にあります。最先端のテクノロジーと、データを管理・分析・保護する効率的なフレームワークを活用することで、金融機関は業務を合理化し、リスク管理に重点を置きながら、コンプライアンス要件を効率的に満たす能力を高めることができます。

規制遵守のため利用できる最新のデータアーキテクチャの主なメリットには、以下のようなものがあります。

  • データガバナンスとコンプライアンスの強化:最新のデータアーキテクチャは、データガバナンスの実践とセキュリティ管理を組み込んでおり、データプライバシー、規制遵守、不正アクセスや侵害からの保護することを保証します。
  • データアクセシビリティの向上:セルフサービスによるデータアクセスと分析を提供することで、最新のデータアーキテクチャはビジネスユーザーとデータアナリストにデータの分析と可視化を提供し、より迅速な意思決定と規制要件への対応を可能にします。
  • データの統合と取り込み:堅牢なデータ統合機能を備えた最新のデータアーキテクチャは、さまざまなソース (構造化データ、非構造化データ、ストリーミングデータ、外部データフィードなど) からのリアルタイムのデータ取り込みを実現します。
  • スケーラビリティと将来性:最新のデータアーキテクチャは、堅牢なデータ統合機能を提供し、構造化データベース、非構造化データ、ストリーミングデータ、外部データフィードなど、さまざまなソースからの効率的でリアルタイムのデータ取り込みを可能にします。
  • コラボレーションとコミュニケーション:最新のデータアーキテクチャは、データエンジニア、データサイエンティスト、運用チーム間の協力を促進するので、データパイプラインの、より効率的な展開、監視、保守につながります。その結果、コンプライアンスプロセスの効率が向上します。
  • リスク管理とコンプライアンス:高度なアナリティクス技術を活用し、リアルタイムの洞察を提供することで、最新のデータアーキテクチャは金融機関のリスク管理とコンプライアンス維持に役立ちます。
  • 規制当局への報告:最新のデータアーキテクチャは、データガバナンス、管理、分析のための包括的かつ効率的なフレームワークを提供することで、銀行、金融サービス会社、保険会社が変化する規制報告要件に対応できるようサポートできます。

最新のデータアーキテクチャのもたらすメリットは、遠い先のことのように思えるかもしれませんが、私たちClouderaは、データによって今日は不可能なことでも、明日には可能になると信じています。Cloudera Data Platform (CDP) を使用して最新のデータアーキテクチャを実装することで、金融機関や保険機関は、急速に進化する規制環境がもたらす課題に、効果的に対処し、グローバルおよび国内規制へのコンプライアンスを確保することができます。

 

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